テレビの話

テレビの地方特集なんかで、現地へ行った芸能人が様子を聞かれた際、お決まりのセリフがある。

「現地の人がみんなあったかくていい人でした!」

こういうセリフを聞くたびに、『そりゃそうだろ』と思わずにはいられない。

だってテレビの取材でしかもそこそこ有名な芸能人がきているんだもの。そりゃいい顔するだろうよ。

べつにそういう番組を穿った目で見続けているわけではない。

現地の人との会話をおもしろく聞いているし、行ってみたいなと思わされる。

 

強いていうならグルメ番組はほとんど信用していない。穿りまくった目で見ている。

数年前鮭の中でも貴重とされる幻の鮭、鮭児がテレビで取りざたされたことがあった。

これを食べてる芸能人たちは「おいしい~!」「口に入れた瞬間とろけるぅ~!」「ふつうの鮭と全然ちがう!」と口々に言っていた。

そんなにちがうのか、さぞおいしいんだろうなぁと私はときめくような気持ちで番組を見ていた。

 

その後、たまたま鮭児を食べる機会があった。

これが幻の鮭か!どんな味なんだろう!とわくわくした気持ちで一口食べて…

 

『ふつうのサーモンだ』

 

それだけだった。多少脂が多いというぐらいだろうか。

私が口にしたものとテレビ番組に出ていたものでは、品物のグレードがまるでちがうのかもしれない。

でも『とろける』とか『ふつうの鮭と全然ちがう』とか、まるでなかった。ふつうにおいしい鮭だった。

かくして、私の鮭児への憧れはあっけなく崩れ落ちていったのであった。

 

あくまで番組を盛り上げるためのコメントだったんだろうけど、視聴者の期待を過剰に煽るのはやめてほしい。

旅先の人の温もりも結局はテレビであり芸能人(有名人)ありきのもののはずだし、口の中に入れた瞬間とろけるのはアイスクリームかオブラートくらいなもんだ。